あるとき、父が「そば粉もほんとは、ハタイタほうが美味しいかもしれん」と言ったことがある。出石そばが有名になりかけた頃である。時々「そば粉をハタイくれませんか」と注文に来るお客さんがあったらしい。遠いところから来た人やった、「よっぽど蕎麦好きな人やで」と父が言った。
こだわりの蕎麦屋は朝、石臼でそば粉を挽き、その日の内に使用する。いわゆる「挽きたて、打ちたて、ゆがきたて」である。石臼で「擂り潰」したそば粉と「ハタイタ」そば粉と果たしてどちらが美味しいのだろうか。餅を例にとると、最近の「餅つき機」は蒸したもち米を擂り潰して作る。それはそれなりの味でおいしいが、ケヤキで造られた臼と杵で搗いた餅のほうがはるかに美味しい。私の家ではどちらの餅も味わっている。その経験からすると「ハタイタ」そば粉で打った蕎麦のほうが美味しいのではないかと思うのである。
一度試してみたいが、今どき「ハタキ粉」を作ってくれる処があるだろうか。<藤原>
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