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サウスリッジホームの家造り
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暮らしのカタチ ― ハタキ粉 ― >>バックナンバー一覧へ戻る

 私が、小学生だった昭和63年は丁度宮崎駿のアニメ「コクリコ坂から」の頃である。当時我が家の生計は牛と蚕と稲作であった。が、実はもう一つあった。それはお盆用の「団子粉」の製造であった。

 梅雨が明けると団子粉の「製粉」が始まる。「ハタキ粉」と父母は言っていた。作り方は以下の通りである。まずもち米と普通の米を配合し清水で洗う。割合はもち米100%でもよいし、もち米80・普通20でもよい。その割合は食感の好みもあるが、経済性も若干考慮に入る。
 
 洗ったお米を大きな竹笊(ざる)に移して天日で乾かす。充分乾燥させてから臼に移す。この臼は地面に(厚み)40センチ、地上見え高20センチ前後、広さ半畳ほどのコンクリート製の土台の中央に穿(うが)たれている。臼の真上にはハタキ粉製造機が設置されている。臼の上から鉄製の杵が垂直に落ちてくる仕組みである。杵は長い鉄の棒の下部先端に連結されている。金属棒の途中に金属製の分厚いリングが嵌められている。そのリングを50〜60センチの鉄製アームが下からカチ揚げる。カチ揚げられた鉄製の杵はある高さまで上昇したあとニュートンの万有引力の法通で「どすン」と落ちてくる。その力で米粒を潰して粉々にするのである。カチ揚げる鉄のアームは回転する金属棒に取り付けられている。回転する棒にはプーリーが付いており交流三極モーターが皮ベルトを介して回している。

音で表現するとこうなる。モーターがヒューンと回り鉄製アームが回転し、鉄の杵をカチ上げる。
「クワ―ンッ」「どどんっ」「クワーンッ」「どどんっ」「クワーンッ」「どどんっ」
「カーンツ 」「どんんっ」 こんな感じである。かなり大きいな音で、村中に響き渡る。



 その音が「クワーンッ」「ドン」、「クワーンッ」「ドン」と変化する。搗(つ)かれている米が臼の縁に向かって次第にずり上がって、底の米の層が薄くなっているのである。その状況を見計らっていて、しゃもじみたいなヘラで米を真ん中に寄せて戻してやるのである。餅つきの要領である。

 徐々に米は粉砕されてゆく。見た目と杵が搗く音で出来具合を判断する。米がかなり粉状なったところをカップで掬い取り、目の細かい篩(ふるい)にかける。これを根気よく何度も繰り返す。何デシベルであったのか分からないがかなりの騒音と暑さの中で父も母も黙々と作業していた。

 そうして出来上がった粉を大きな紙の上に広げて、天日で干す。充分乾燥させて「ハタキ粉」の1丁あがりである。この「団子粉」は評判が良く、多くの注文があった。親戚縁者がお盆の墓参りに帰省してくると父と母はお土産に持たせていた。

 あるとき、父が「そば粉もほんとは、ハタイタほうが美味しいかもしれん」と言ったことがある。出石そばが有名になりかけた頃である。時々「そば粉をハタイくれませんか」と注文に来るお客さんがあったらしい。遠いところから来た人やった、「よっぽど蕎麦好きな人やで」と父が言った。

 こだわりの蕎麦屋は朝、石臼でそば粉を挽き、その日の内に使用する。いわゆる「挽きたて、打ちたて、ゆがきたて」である。石臼で「擂り潰」したそば粉と「ハタイタ」そば粉と果たしてどちらが美味しいのだろうか。餅を例にとると、最近の「餅つき機」は蒸したもち米を擂り潰して作る。それはそれなりの味でおいしいが、ケヤキで造られた臼と杵で搗いた餅のほうがはるかに美味しい。私の家ではどちらの餅も味わっている。その経験からすると「ハタイタ」そば粉で打った蕎麦のほうが美味しいのではないかと思うのである。

 一度試してみたいが、今どき「ハタキ粉」を作ってくれる処があるだろうか。<藤原>

 

 

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