宅建協会の講習が阿倍野で開催された。帰りは地下鉄である。谷町線阿倍野駅の改札へ向かう。切符の自動販売機が新しくなっていた。私はめったに地下鉄は利用しない。私が知っている自動販売機ではない物体があった。なにやら色々な絵柄が表示されている。ピッ、ピと押して行けば良いのだろうと推測するが、よく判らない。八尾南までの切符を買うのに市バスですか定期ですかとかなんとか。「うーむ、ウーム」と販売機を睨む。 後ろ45度後方から「あのう」と優しげな声がする。「ハイィー」と水谷豊風に振り向くと、28歳前後、北川景子風の美女が小首をかしげて「どうされました?」と言う。「最近の機械は親切すぎますな」と答えるともなく言うと、「そうですよね。かえって不便ですよね。私も良く分かりませんが切符、買ってあげましょうか?」と北川景子がニコッと微笑む。彼女のおかげで難なく地下鉄に乗れたのであった。「最近の若い(キレイナ)女性は捨てたもんじゃあないのお」と気分良く彼女を見送ったのであった。
梅田の紀伊国屋へ行く。旭屋、ブック・ファースト、ジュンク堂。大きな書店に行くと思いがけず探していた本に巡り会うことがあるので月に一度くらいは大型書店へ行くことにしている。昔、堂島グランドビルとか駅前第三ビルで仕事をしていたので三番街は熟知とまでは行かないが、大体は把握していた。ところが、久しぶりの阪急三番街は風景が変っていて東西南北上下左右、さっぱり判らない。エトランゼである。若干ウロウロしていたように見えたのであろう。八千草薫が若かりし40歳前後の頃はこうであったかと思えるふうの顔立ちの和服の女性がさりげなく私に近づき「どうされました?」と言った。つい私は「はい」と言ってしまった。すると妙齢の美女は柔らかな声で「御トイレならこちらを真っ直ぐ行かれてその先を右に行きその左に御座いますワ」と白い指で指し示した。「ありがとう」と反射的に言ってしまった。「どういたしまして。御気をつけて行って下さいね」と彼女は会釈して去っていった。私は特にモヨオシテいたわけではなかったが折角の親切なのでトイレに向かった。和服姿の女もええもんですなあと思いながら。
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