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暮らしのカタチ ― 柿 ― >>バックナンバー一覧へ戻る

            柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺

 子規が詠んだ俳句の中でもよく知られた一句である。伊集院氏の著書「ノボさん」の中でその柿は〈御所柿〉で鐘は〈東大寺の鐘〉とあった。
 御所柿は実家の近くに大木が辺りを睥睨するかのように立っていた。私が子供のころすでに古木(ぬし)の風格があった。毎年大きな実をみのらせた。どういうわけか長らく「五升柿」と思っていた。それがほんとは「御所柿」だと知ったのは大人になってからである。大人たちが「ごしょうかがき」と言っているのを勝手に五升柿と思い込んでいたのだろう。しかし食べたという記憶はない。その御所柿の所有者は○太はんといって遠い親戚と聞かされていたが、貰って食べた記憶はない。
妻の実家の隣に御所柿の古木があり、最近はほぼ毎年妻の両親が貰ってくれて、届けてくれる。吉野の富有柿とはまた違う味で、どちらが美味しいかということは簡単には決められない。ただ御所柿は日持ちしない。だから商品にはなりにくい。収穫したその日に食べないと値打ちがない。だからスーパーなどの店頭に出たのを見たことがない。一期一会の味といえるかもしれない。その点富有柿は日持ちするので普遍的でお使い物にしても大丈夫だ。

 この春先あるところでさくらんぼ農家の方と話す機会があり、話の流れで富有柿を送りましょうと約束してしまった。「佐藤錦より大きくて美味しいのを作ってますよ」とおっしゃるので、「しからば奈良は西吉野の富有柿を食べたことはおありか」秋には送って進ぜる。と大見得を切ったのである。

 10月の終わり頃、妻と二人で西吉野に柿を求めてでかけた。昔富有柿を買っていた店の名を記録していたメモがどこかへ無くなり、仕方なしにうろ覚えの「西吉野奥谷」をめざし最新のナビで出発。香芝から山麓線、長柄から309号線で下市口へ。千石橋を渡る。少し行くと柿の葉寿司の「やま十」が健在であった。買うべし。しかし本日は売り切れです、との張り紙。昔の味を知っていることと10何年振りということもあり諦めきれず後日「お取り寄せ」する。結構高くついて仕舞ったが懐かしい味に10何年振りに出会えたことを思えばなんのなんの後悔はしておりません。気が付いたこととして一日おいて食べたほうが美味しかったこと、そして柿の葉寿司の鯖の身の恐ろしく薄いこと。でもこれがやま十流でございます、と言われればヘヘーと恐れ入ってしまう我が身です。

 気を取り直して奥谷へと向かう。途中平原五條線に入ると段々秘境の道を行く雰囲気になってゆく。途中まで其処ここに見え隠れしていた柿木畑も見えなくなってしまった。やっと奥谷地区を発見するがとても車で入ってゆける道ではない。うろうろしていると近所の農家人親子に出会う。軽トラを止めて「先に行けば集荷場があるよ」とのこと。親切な親子に会ったなァと二人はほっとしながら「集荷場に行けばなんとかなるで」と話しながら集荷場に向かう。しかし意に反して時刻が悪かったせいか如何にも「残り物でスミマセン」といった品物しかなかった。われら二人は柿を見る目は人並み以上にあるのです。しかたなしに何も買わずに出発する。戻ろうかそれとも前人未踏の秘境を行くか迷ったが後退せず前進する。ところがしばらく行って後悔する。道幅が狭くて対向車が仮に軽四でも行き違いできそうにない。しかもくねくねと羊の腸のように曲がりくねり登ったり下ったりしている。
「ガス欠になったらこまるなァ。やっぱり小型のハイブリッドできたらよかったなァ。」とか冷や汗ものでドキドキしながらこわごわ「女の人運転」で進む。突然ぱっと、広い道が出現する。その時浮かんだイメージは「国境、くにざかい」であった。蒲田行進曲の最後のシーンであった。かなりホットした気分で少し走ると辯天宗御廟が見えてきた。こうゆうときに神のありがたさを感じるのであろうか。五條市が開けて待っていた。

 農協のYさんが「御所柿の苗、手筈ついたで」と電話をくれた。「苗は5本セットじゃないとあかんらしいわ。」「苗は安いんやけど送料が1,700円もするんやけど」どうしますかと聞く。こちらから頼みごとをしていて断るつもりなどなく、二つ返事で「お願いします」といって電話を終えた。これにはちょっとした経緯(いきさつ)があった。近年御所柿が減っている、これでは伝統ある御所柿が世間から消えてしまう。御所市としては伝統ある御所柿を守りそだてようじゃないか、との趣旨で御所柿振興会なるものが結成された。そのテレビニュース番組を私は偶然みたのであった。そんな事情なら協力しますよ、の気持ちで頼んでいたのである。

 私の家の南側の庭には、東から棗、富有柿、ゆず(大きなゆずではなくスダチくらいの小さな実です。18年待って結実したのが小さくてがっかりしたのですが、人生60有余年見たこともないかわいらしいゆずなのです。姫ゆずと名を付けました)。そして今年からキウイ、さくらんぼ2本と賑やかになってまいりました。

 棗の西隣とゆずの西隣に御所柿を植えます。今度は富有柿の失敗を反省し、低木で育てようと思っています。なにせ富有柿は西吉野の柿畑にある柿木とは似ても似つかぬしだれ柳のようなカタチなのです。でも味は西吉野の柿に匹敵するおいしさです。自由に好きなように育っているとも言えます。

 11月12日ゆずの木が余りにも自由奔放に大きくなっているので、剪定すべしと気合を入れてカットを始めました。しかしなかなか手強いのです。実は小さいのに幹や小枝のいたるところに大きな棘が人間の手をガードしているのです。しばらくやるうちに何か所も刺されて出血です。途中で諦めました。

        きれいなバラにはトゲがある ちいさなゆずにも五分のトゲ

 寒くなって参りました。赤瀬川源平氏もなくなり、福田みどりさんも鬼籍に入られました。あっという間に11月も終りに近づきました。光陰矢の如しですね。年末には衆議院の総選挙があるらしく、投票日は12月14日。なんと私たち夫婦の結婚式記念日ではありませんか。  <藤原>

 

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