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サウスリッジホームの家造り
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こだわりの空間
暮らしのカタチ ― 山川草木 ― >>バックナンバー一覧へ戻る

 父母が米寿の会で親戚一同に祝ってもらった頃。二人はまだ元気で父は十分歩けたし、母は車いすが必要だったがまだまだ達者な話ができた。そのころ薬師寺や法隆寺に行ってひ孫二人も加えて記念写真を撮ったこともあった。父と二人だけで法隆寺に行ったのは米寿の祝いのあとで、広大な境内の広い道を二人で歩いた。特に何も話すことなくゆっくり歩いた。

   山川草木転荒涼(さんせんそうもく うたた こうりょう)


 お父さん、ボクは親孝行な息子だったのでしょうか。
そういえばボクはお父さんなんて一度も呼んだことなかったね。てれくさかったのかな。
いつも阿吽の呼吸で、それこそアア、うんで通じていたね。おとうさんの炭焼き手伝った時。お父さんは一服しようかと言って、タバコを吸った。たばこの煙が山の中腹を流れていく。ボクは煙の向こうの空を黙って見ていた。中国山地日本海側のうす青い空にタバコの煙が溶けていくのを飽きることなく眺めていた。

   十里風腥新戦場(じゅうりかぜなまぐさししんせんじょう)

 




 お父さん、お父さんは子供孝行な親だね。もちろんお母さんも。二人とも94歳になって、子供たちに迷惑かけていないもの。お母さんは施設に入っているけど会いに行けばニコニコと笑ってくれる。お父さんは一緒にビールを飲んで歌の一つも二つも歌ってくれる。田舎に帰るたびに二人で村の道を散歩したね。二年ほど前なら1キロくらいは元気に歩いていたのに。
今はもう、50メートルも歩けば息切れするようになってしまった。


征馬不前人不語(せいばすすまず ひとかたらず)

一生で初めてお父さんと取っ組み合いのけんかをしたことがあったね。僕がおじさんのことを悪く言い過ぎたからお互い酔った勢いもあってそうなったんだね。大ゲンカになりそうなところを弟に抱き止められたね。

法隆寺の食事処で昼ご飯を食べたとき、「ワシも実はあいつのことあんまり、好きじゃなかった」とボクに云ったね。取っ組み合いをした次の日の朝、お父さんに〈おやじ、悪かったな〉って謝ったとき「忘れた!」と言って笑ってくれた。あの日のことを忘れてなくて、法隆寺で謝ってくれたのかな。


金州城外立斜陽(きんしゅうじょうがい しゃようにたつ)


法隆寺境内の斜陽の中に二人で静かに立っていた。 <藤原>

 

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