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暮らしのカタチ ― レジェンドとの日々 ― >>バックナンバー一覧へ戻る

“いい車に乗ってますね”
“綺麗に乗ってはりますね”
セブンイレブンのホットコーヒーを片手にした男に声を掛けられた。

 朝、王寺から柏原国分に向かう国道沿いにある店の駐車場でのこと。「このチェンジレバー、って慣れないんですよネ」と云う。初老というには少し若いオジサンはどうやら新型のCR−Vを購入したらしい。新型はレジェンドと同じ電気式のようだ。もう3台目なんですよCR−V、と言う。しばらく車談義のようなものをして別れた。男は国道25号線をひょいひょいと小走りに渡り、消えていった。

 令和になるまでの平成最後の4年間、ホンダのレジェンドに乗った。この4年の間に父が死にそのあとを追うように母が亡くなった。二人とも享年96歳だった。両親を失って初めて「一人」になった寂しさを感じた。孤独というものではないが、これからは一人で生きてゆくのだな、もう守ってくれる親はいないのだという不思議な恐怖にも似た心理である。68歳にもなって何をゆうとんねん、と思うのだが。家族を守ってゆくぞと思ってもそんな若い時期はとうに過ぎた。昔ならご隠居さんなのだから。「70にして心の欲する所に従って矩を踰えず」程に悟らねばならぬ。親が長生きすると子はボーとして過ごし独り立ちが遅れるようだ。

 




   さらに会社の恩人二人が天に召された。大して恩に報えなかったことが悔やまれる。
大切な4人が死んだというのに我がレジェンドは平然としていた。案外冷たいヤツなのだ。朝気持ちよくV6・3500CCが目覚める。なんと382馬力なのだ。ハイブリッドなのでモーターで走り出す。アクセルを強く踏めば猛然と加速する。スピードメーターは260キロまである。モンスターなのである。雨の日も風の日も、夜中でも早朝でも。何一つ文句を言わず主人が車を擦ってもふてくされず従順に何食わぬ顔で走り続けた。オーディオはアメリカの高級メーカー「クレル」である。日本の自動車メーカーでクレルを選べるのはホンダしかあるまい 。

 しかしこの夏で相棒とも別れることになる。朝のオジサンの言葉が甦る。急にレジェンドと別れるのが辛くなる。もっと大事にしてやれば良かった、もっと能力を最大に発揮してやればよかったな、とか。おおーお前はこんなことも出来たのか、とか。一度くらい200キロで走ってほしかったのか、とか。例えばクオードのアンプを気前よく誰かにプレゼントするとしょう。急にクオードが愛しくなり手放すのが惜しくなるような気持。その刹那に初めてその良さを実感するのだ。何気ない日常、いつも通りのお前と俺、当たり前のような日々。別れることになって初めて気付く値打ち。感謝とか慈愛とかは失って初めて判るものなのか。失うまで理解(わから)ないものなのか。

 さらばレジェンド、いつの日かまた逢おう。 <藤原>

 

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