これは史記・刺客列傳にある有名な易水歌という詩です。秦の政(後の始皇帝)を暗殺すべく出発する刺客が易水のほとりで吟じた詩です。私も青春時代この詩に憧れこんな生き方をしたいと思っていましたが、そのような機会もなく今日に至っています。
団塊の世代と呼ばれるのは1946年から1949年の間に生まれた人たちのことです。この世代の人たちによって日本の高度成長経済が達成されたことは間違いありません。日本全国津々浦々から若者たちが都市へ流入し、企業戦士になったのです。全国の農村で易水歌のような気分で故郷に別れを告げたのではないかと思います。そう言えば「仰げば尊し」の歌詞の中に(身を立て名をあげやよ励めよ)というのがありました。身を立てたか、名をあげたか、は別として、定年を迎えた彼らはどこへ帰ればよいのでしょう。故郷に錦を飾れという言葉も今では死語になった感があります。
“故郷は遠くにありて思ふものそして悲しくうたふもの よしやうらぶれて異土の乞食となるとても帰るところにあるまじや ひとり都のゆふぐれにふるさとおもい涙ぐむそのこころもて遠き都にかえらばや 遠き都にかえらばや” ―室生犀星―
|